方便とは!?武道の流派は方便の違い?

武道と方便

 

こんにちは、合気道合心館の小川です。

 

 

「嘘も方便や!」よく言いますが・・・

 

(よくは言わんか・・・) 

 

 

方便とはどのような意味なのでしょうか?

 

方便とはもともとは仏教の言葉のようです。

 

 

また、剣術書の「天狗芸術論」の中に方便という言葉は出てきますが、剣術と方便はどのような関係があるのでしょうか?

 

 

今回はそのへんをタラタラ書いていくとします。

 

 

 

 

方便とは?

方便とは?

 

方便とは仏教で、「人を真の教えに導くための仮の手段」のことになります。

 

 

釈迦が説かれた教えを本当に理解することは、庶民は大変難しいものです。

 

 

いきなり理解するのは難しいかもしれません。

 

 

そこで、多くのお坊さんが、庶民を教え導いて、少しでも仏教の教えに近づけるために、様々な手法を考案しました。

 

 

これを「方便」と言います。

 

 

一旦、お坊さんは庶民に教えに近づけるために、真実とは違うことも教える事があり、「うそも方便」という言葉ができました。

 

 

 

おがわ
おがわ
私が合気道の体験者が御所南道場に来られる際、迷われた場合、「とりあえずこども未来館(近くで目立つ建物)に来てください。」と電話で説明するのとどことなく似ていますね。

 

 

「方便」をイメージにするとこんな感じ

 

 

 

 

方便イメージ図
方便イメージ図 ※クリックで拡大

 

 

本当は、京都御所南道場に体験者を導きたいのですが、電話で説明が難しいで、いったん近辺で目立ち有名な「こども未来館」まで来てもらうのです。

 

 

 本当は御所南道場に導きたいのに、こども未来館を目指してくれというのは、ウソといえばウソ。

 

 

いや、うっそっ・・・

 

 

でも、それによって御所南道場には近づきますよね。

 

 

結果オーライ

 

 

これを「嘘も方便」と言います。

 

 

(御所南道場を仏教の真理とお考え下さい。)

 

 

 

 

「方便」の語源は?

 

 

「方便」はサンスクリットの upāyaウパーヤ(近づく、到達する)の漢語訳です。 

 

 

 

 

法華経(ほけきょう)の「三車火宅(さんしゃかたく)」のたとえ話

三車火宅
三車火宅イメージ※クリックで拡大

※クリックをすればAmazonで購入できます。

 

大乗仏教の代表的な経典である法華経の中に「嘘も方便」の元となった「三車火宅」というお話が載っています。

 

 

「三車火宅」をあえて日本昔話風にご紹介しますね。

 

 

市原悦子バージョンでお楽しみください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


■「三車火宅」の物語

 

むかしむかし・・・

 

 

あるところに大金持ちの老人とその子供たち30人とが、同じ家に一緒に暮らしておったそうじゃ

 

 

ある時その家が火事になってしまったんじゃ

 

 

運よく老人はすぐに逃げることができたんじゃが

 

 

30人の子供たちは火事が起きたことを知らずに家の中で無邪気に遊んでいたんだそうじゃ

 

 

老人は焦って、家の中で無邪気に遊ぶ子供たちにこう叫んだんじゃ・・・

 

 

 

 

老人
子だくさんの老人
「おい!わらべたち!今家が燃えているぞ!このまま家の中にいると家は焼け落ちて、おまえたちは焼け死んでしまうぞー!早くそこから逃げるんじゃーー!」

 

 

 

と叫ぶのですが、子供たちは火の怖さを知らないので、遊びをやめようとはしなかったそうじゃ

 

 

「おっとー、火なんかこわくなんじゃ。今遊びがええとこじゃー。」

 

 

 

  

さらに老人は焦り、子供たちが普段から欲しがっていたもので誘い出す作戦を思い立ったのじゃ

 

 

 

 

老人
子だくさんの老人
「おーい、わらべたち!今わらべたちが大好きな、なかなか手に入らない珍しいものがここにあるんじゃ!羊の車と鹿の車と牛の車だぞ!わらべたちにこの車をあげるから、今すぐ家の中から早く出てくるんじゃーーー!」

 

 

こう老人が叫ぶと子供たちは、羊の車、鹿の車、牛の車欲しさに、燃え盛る家から急いで出てきたんじゃ

 

 

そして、命を救われたそうじゃ

 

 

 

三車火宅のたとえ

 

 

羊の車、鹿の車、牛の車は実際にはなかったのじゃけど、その嘘によって子供たちは命を救われたので

 

 

めでたしめでたし・・・・

 

 

羊の車、鹿の車、牛の車で三車、家が火事なので火宅ということで「三車火宅のたとえ」といわれ、嘘も方便のたとえ話として後世まで語り継がれることになるのじゃ

 

 

 

 

 

羊の車、鹿の車、牛の車

 

 

こちらの「三車火宅のたとえ」を紹介したYoutube動画が分かりやすいです。

 

 

ぜひ、ご覧くださいね。

 

 

 

武道の流派は「方便」!?天狗芸術論より

天狗芸術論

 

 

剣術家が深山にて、天狗から剣術の極意を教わるという武道書「天狗芸術論」の中に「方便」という言葉が出てきますので、ご紹介します。

 

 

 

大テング様
大テング様

剣術の原理は天地自然の原理である。

 

だから、私が知っていることについて他に知らない人がいないなどという事はありえない。

 

秘密にするのは初心者のためなのである。

 

秘密にしなければ、初心者はまだ信用できないのである。

 

それは剣術を教える者の一つの方便である。

 

 

だから、秘密にするのは末端の技である。

 

極意を秘密にするわけではない。

 

初心者は何のわきまえもなく、でたらめに聞きかじり、誤解して、それを自分では正しいと信じて他人に語ったりする。

 

そのような場合にはかえって害になるのである。

 

 

だから、初心者がよく理解できることでなければ教えないということであろう。

 

剣術の究極原理については、相手が同門の人でなくても、広く語り合い、隠すことはない。

  

 

秘密にするのは多くの場合、兵法の方便である。

 

 

引用:「天狗芸術論・猫の妙術 全訳注 (講談社学術文庫)」

 

 

 

 


 

 

つまり、剣術の指導の際に、初心者に技の一部を秘密にするのは、初心者を正しく導きやすくするための方便であるということです。

 

 

何もいじわるをして、もったいぶって極意を秘密にしているわけではないということです。

 

 

 

 

 天狗芸術論では世の中には多くの剣術流派が存在するが、その極意(道理)は同じであるとしています。

 

 

では極意は同じなのに、なぜ多くの流派が存在するかと言えば、各流派の開祖や、先覚者が修練の経験から、自分が入りやすいと思う扉から弟子を導き入れているだけの事である。

 

 

ある意味、流派とは開祖の「方便」の違いと言えるかもしれません。

 

 

これは宗教や学問でも同じことであると・・・

 

 

それであれば、「方便」の違いでお互いに争い合うのはおかしな事なのかもしれません。

 

 

 

 

おがわ
おがわ
私が稽古をしている合気道でも、先生により技や稽古方法がかなり違います。 でも、大切な部分は共通しているそうです。そうであるなら、郷に入れば郷に従え。出稽古や講習会に行く際はぜひその先生の指導通り素直に稽古してみてください。

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