50代の稽古 ~自己練磨の時代~
僕が新卒で愛媛勤務になって、合心館に通っていたのが、
確か館長が50代後半くらいの頃だと思います。
当時は、館長の技はすごいスピードとキレで、毎週日曜日は朝から晩までバンバンひたすら投げていただきました💦
でも、その頃はあまり合気道の技術的な事を教えていただいた記憶はありません。
みんなバンバン稽古していて、
今より館長が会員さんに何かを教えるという事は格段に少なかったように思うのですが・・・
そうやな。
50代の頃は自分が稽古したいだけやな。
自分が稽古するのに必死で、人の事まで気が行かんかったわ。
ご自身が必死で稽古しておられたと・・・
受けに関しては、どんな持ち方をしても何も言われなかったですね。
なんで、ビックリするくらい頑張る人がかなりおられました。
稽古中、一回も技ができないという(笑)
でもあれで僕は鍛えられました。
そうやな(笑)
いろんな人がおったな。
今思うと、力いっぱいですごい持ち方で頑張る方もおられたけど、
館長は特に注意もせずに、「こーか?、こーか?」言いながら、研究されていましたね。
あれは自分が稽古してたんやな。
どんな持たれ方したも掛けないといけないと研究していた。
なので、ギュウギュウ脇をしめて持ってくる人も多かった。
普通は怒られるわな(笑)
今は割と頑張る人は少なくなった印象ですが、
それはきちんと受け身を取った方が稽古になるからと考えられての事でしょうか?
まあ、稽古にならへんというのもあるけど、相手が怪我するわな。
怪我は一番あかん。
自分の技が上手になっても、相手を怪我させたらあかんわな。
当時、館長は技術に関して教えられなかったので、
僕は日曜日に朝昼晩と稽古に出て、投げらまくる中で、身体で感覚を覚えておこうと思っていました。
今のように、ご自身の技術を少しづつ教えるようになっていかれたのは何かきっかけがあったのですか?
うーん・・・
確か・・・
あれは他所でやってた人やったんかな。
当時はわしも教えんもんやけん、みんなバンバン稽古していたんやけど、
その人が「ここの稽古はハードなんでついていけない」言ったんかな。
それで少しづつ教えるやり方に変えていったんやな。
それは僕が営業職になって愛媛を離れてからですね。
50代までは指導というより、自己練磨に集中されていたんですね。
そうやな。
自分の稽古に必死やったな。
周りを見る余裕がなかったわ
●中心軸について ~デンデン太鼓のように~
話は少し変わりますが、
館長は丹田以外に「軸」とか「中心軸」とか言われる事が多いですが、
いつくらいからその感覚があったのでしょうか?
いつくらいからかな・・・
あれは今の合心館(美沢に移転)になってからかな・・・
東京の有名な踊りの先生が教えに松山に来たんや。
それでわしも誘われて一緒に行ったんやけど・・・
若い人ばっかりで全然ついていけんのや。
ほんで、わしは隅っこにおったんやけど
休憩時間になったら、その先生がトコトコわしの所に来て
「あなたは軸で踊っていますね」と言われた。
周りは、わしよりすぐ覚えて、上手に踊ってる人ばっかりなんやで
へー
その先生には館長の軸が見えたのかもしれませんね。
その館長は自分では軸で踊っている感覚はあったのでしょうか?
いや・・・わしはよく分からんかった。
それでその先生に「どういう事でしょうか?」と聞くと
その先生は
「デンデン太鼓があるでしょ。それと同じで軸が回ると手が動くでしょ」
と言われた。
「みんな手だけで踊っていて、軸が動いていないけど、あなたは軸が動いていますね」
と、すごい先生は見るところが違うなとビックリした。
周りは上手な人ばっかりなんやで、わしは全然踊れてなかったのに
館長は丹田は割と早い段階で、意識をして、稽古の中で取り組まれていたのですが、
中心軸を意識しだしたのは、割と遅かったのですね。
美沢道場ができてからという事は、50代くらいですね。
それまでは稽古の中で軸と指導する事はなかったのでしょうか?
指導では「姿勢を正しく」とは言ってたかな。
軸とはあまり言わんかったかな・・・
館長はそれまでは軸の感覚はなかったのでしょうか?
まあ、軸は意識した事はなかったけど、
踊りの先生が「軸で踊っている」と言われるくらいやから、
合気道の稽古の中で自然に「軸」ができていっていたんやろうな。
それから、踊りの先生が言われた事が気になって、
デンデン太鼓を買いに行ったわな。
実際に試してみたと(笑)
ほんで、コンコンやっている内に色々気が付いた。
どんな事を気付かれたのですか?
デンデン太鼓を思い切りコンコンやってると、太鼓に穴が空くんじゃ。
そんで、軸がしっかりしたら、こんだけ力が出るんやなとか・・・
太鼓についている紐があるやろ。
紐の先に重しがついてないとあかんのや。
その重しが手で言ったら指先やな。
脱力は大切なんやけど、ただ力を抜いていたのでは、紐だけの状態。
力はでんわな。
手は柔らかいけど、指先にはしっかり、意識がないといけない。
だから、館長は級の内は指先に意識を行かせる為に、
しっかり指を張れとよく言われますね。
あとは、でんでん太鼓は左右の紐の長さや重しの重さが違っても
軸を回したら、ちゃんと回るんや
合気道で言う二人掛けの場合、二人とも力の強さや持ち方が違うやろ。
それでも軸さえしっかりしてたら、技はかかる。
あとは、斜めにしてもデンデン太鼓は回るんじゃ。
軸が斜めになっても、軸があれば技がかかる。
館長がよく取りのつもりで受けをすると言われ、返し技をされますが、
自分が崩れてもなるべく軸を保っておくという事が大切かなと、
僕は受身の時なども、なるべく軸を崩さず、受け身を取る様に心掛けています。
そうやな
姿勢が曲がっていても、軸があればいいんよ
せやから合気道は姿勢が悪くてもすごい人がいたりする。
特に年配の人は・・・
これは手を持ってみないと、分からない。
60代~70代の稽古 ~変化の時代~
次は60代以降のお話を伺えたらと思います。
私の記憶では50代の後半から、大きく合気道が変化してきたように思うのですが、
そのあたりは何か大きな気づきなどあったのでしょうか?
自分ではよく分からんけど、変わって来たのやろうな。
それまでも引っ付くような感覚もありましたが、
それ以上に技のキレがすごくて、受け身を取るのに必死でした。
それが少しづつ、ドロ~と崩したり、引っ付く感覚が強くなってきた気がします。
植芝開祖も合気道は60歳からやと言われたやろ
それまで稽古してきた事が出てきたんやろうな。
若い時は力も体力もあるけど、60歳になって少しづつ余分な力が抜けてきたのかもしれんな。
それはご自身で何か意識をして、変えていかれたとかではないのでしょうか?
何か大きな気づきがあったとか・・・・
合気道の場合は急に成長する事はないんやな。
小川君には急に技が変わったように見えるけど、その前からずっと変わって行ってたんや。
稽古をしている内に、自分でも分からないくらいゆっくり成長しているのがほんまなんやな。
昔、愛媛の時に僕が「最近、技が変わりだしましたね。」と言うと、
館長は「合気道は急には成長しない。でも、周りから急に技が変わったと言われる事がある。
それはコップの水があふれだしたようなもので、実際はあふれる前から水は注がれ続けていたんや。」
と言われた事がありました。
(少しづつ成長するので)
自分では分からんけど、そうやって人が「変わった」と言ってくれたら本物やな。
●合気道はゆっくり成長する
今、館長が時間がかかるというのは、内面の力(丹田や軸や呼吸力)の事でしょうか?
受身や技の習得などは合理的にやれば、随分早く習得する事も可能だと思うのですが・・・
そうやな。
はじめ形(技とか受身とか技術)は覚えが早い人と遅い人で差がでる。
でも、本当の意味で合気道が上手くなる(内面の力?柔らかさ?)のは誰でも時間がかかる。
だから合気道はどんくさい奴が覚えの早い人を後から追い越す事もあるんやな。
それは何故でしょうか?
覚えの早い人は、なんぼでも覚えれるから、一段飛ばしで先の事をやってしまうんやな。
なので、後からもう一回、戻ってこないといけない。
でも、それは中々できんのやな。
そんなんやったら、他の事やりますって・・・
逆にどんくさいやつはコツコツ基本からやっていくから、はじめは中々上手くならなくても、
最終的に覚えのいい奴を追い越す事もあるんやな。
確かに
館長も体が弱い事もあって、人よりマイナスからスタートして、コツコツ稽古されましたよね。
以前に何でもすぐできてしまう器用な人が入会してきたけど、
合気道はそうはいかんので難しかったと言われていた気がします。
器用な人とか、りこい人(利口な人は)はちょっと難しいわ。
何かいうたら、先々やりすぎるんよ。
特に今は情報もあるしな
まあ、自分で考えて色々やる時期もあってええんやで。
それで色々やってみて、
自分で「基本が大切や」と気づいたら、パンと変わる。
「色々やってみて基本が面白くなった頃に合気道が上手くなる。」
と以前から言われていましたね。
合気道は最後は自得する事が大切なんですね。
自分が必要やと思わないと、モノにならんわな。
あと、 (基本に関して)こういう話があって・・・・
昔、ある人は植芝盛平開祖の噂を聞きつけて、道場にきて、稽古を見た後、
「植芝先生の極意を見せてください。」と
ほんだら開祖は
「爺はいつも極意を見せとる。」と言ったらしいわ。
でもその人は何かあるはずだと納得せんかった。
その時、極意やと開祖が見せたのが一教と入身投げやったらしいわ。
合気道は基本技が極意なんやな。
開祖は座技一教が好きで、確か朝稽古で開祖が来る時は、
座技一教を稽古していると上機嫌だったという逸話が残っていた気がします。
せやけど、基本技ばっかりやったら、面白ないけん、時々色々やってみるのもええわな。
特に京都大阪はわしが松山から行って小川君と同じ事しても、仕方ないけん。
「基本技ができたら、こういう事もできるよ」ってわしも色々やるわな。
まあ、100%誰もが良いっという稽古はないわ。
そんな稽古があったら、みんな達人や。
●最後に・・・・
本日は長々とインタビューありがとうございました。
数回にわたって、
谷本館長がどういう稽古をされてこられたかと合気道の技というか技術的な事をインタビューさせていただきました。
最後に、合心館京都大阪で合気道を稽古する会員さんに、どういう点を注意して普段、稽古に取り組めば良いかメッセージを頂けたらと思います。
無理せず、その時できる稽古を精一杯する事ちゃうかな。
学生とか若い人は元気よく力いっぱいしてほしい、
それが高段者みたいな力を抜いた技をしててもわしはあんまりええと思わんのやな。
逆に年配の人が無理して、若い人のまねをして、息を切らしながらい無理するのも良くないし・・・
初段の人が高段者の技をまねしても、よーないし
逆に高段者になれば、技に深みと柔らかくなってこんといかんし
自分のレベルのちょっと上を目指して、今できる事を精一杯、稽古するのが一番ええんちゃうかな。
楽しく、焦らず行けたらいいですね。
合気道に完成はないんやな。
肉体がある内は、修行なんや。
無理せず、焦らず、ほんで楽しくやる事やな。
気が付いたら一時間以上経っていました💦
本日は色々お話を聞かせていただいてありがとうございます。
また、ちょこちょこお話を伺っていけたらと思います。
どうぞ、色々大変な時期なので、十分お気を付けください。
インタビューをお読みいただきありがとうございます。
現在、二カ月に一度、偶数月に谷本館長を京都・大阪にお呼びして、稽古会を開催しております。
合気道経験者の方であれば、どなたでも参加できますので、お気軽にお問合せくださいね。
↓↓今後の開催予定はコチラの画像をクリニックしてご確認ください。
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山越克雄 (水曜日, 20 1月 2021 21:28)
動画で谷本館長の丹田の力を見た時には感動しました。私も氣の力、臍下の一点という藤平光一先生(故人)の影響を受け、また、所属団体の誘導、導きという動作を実践していますが、丹田の方向と体の方向、丹田の上下というお話を拝聴し、稽古で試してみたところ、その通りでしたので、またまた感動しました。私は京都からは極めて遠いところに在住し、指導もしていますので、直接ご指導を賜る機会はないかと存じますが、これからも説明演武の動画を拝見しつつ、己の技の向上に役立てたいと考えます。谷本先生の方言はわかりにくいところがありますので、字幕を入れていただければ幸いです。