植芝吉祥丸先生のお話 ~合気道の和合の理念を円の技で表現~

 

おがわです。

 

 

今日は、植芝吉祥丸二代目道主のお話・・・

 

 

コロナで道場閉鎖中に、コロナ明けにどのように工夫をしていくかを、模索している中で、

 

様々な先生方の動画を見ていました。

 

 

その中で一番よく見ていたのが、二代目道主「植芝吉祥丸(きっしょうまる)」先生の動画です。

 

 

恥を忍んで、正直に言うと、

 

私は若い頃は吉祥丸先生の技に全く興味がありませんでした。

 

 

クルクル回って、踊りみたいに思えて、実戦的な合気道でないように感じたからです。

 

しかし年々、吉祥丸先生の演武の素晴らしさとスゴさが、分かってきたような気がします。

 

 

 

二代目道主 植芝吉祥丸先生

植芝 吉祥丸(うえしば きっしょうまる、1921年6月27日 - 1999年1月4日)は武道家。

 

日本の合気道の二代目の継承者。父は合気道開祖植芝盛平。

 

次男は三代目道主植芝守央。

 

◉略歴

 

1921年6月27日 京都府何鹿郡綾部町(現綾部市)に植芝盛平の三男として生まれる。

 

1946年 府立六中(現東京都立新宿高等学校)、早稲田大学高等学院を経て、早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業。

 

1948年 開祖盛平に代わり合気道本部道場の道場長となる。大学卒業後は新日本証券でサラリーマンの傍ら合気道を指導していたが、のちに合気道に専念するため会社を退職。

 

1967年 財団法人合気会理事長に就任。

 

1969年 開祖逝去により合気道二代道主を継承。

 

1986年 合気道普及発展の功により秋・藍綬褒章を受章。

 

1995年 春・勲三等瑞宝章を受章。

 

1996年 財団法人合気会会長に就任。他に国際合気道連盟会長、全国学生合気道連盟会長、財団法人日本武道館理事その他多くの要職を務める。

 

1999年 1月4日死去。日本国政府より正五位を賜る。

 

引用:Wikipedia

 

 

 

 

なぜ、こんなに丸く大きく動くのか・・・

 

では、吉祥丸先生は、なぜこのような大きな円運動を行われるのでしょうか?

 

第25回全日本合気道演武大会の説明演武の吉祥丸先生の言葉の中から、私が思う理由をご紹介したいと思います。

 

 

 

①合気道の「和合」の理念を動きで現している

「合気道というものが最近、社会的に期待を持たれています。

それは合気道の動きが非常に丸く、無理の無い動きです。その丸い動きが社会的な営みの中に現れてくれば、お互いに争いはなくなりますし、それが大きく広がれば、世界の平和という事につながると、こういう点を(植芝盛平)開祖も期待をして、共に稽古をしていこうと言われていたのではないかと思います。(説明演武より)」

 

植芝開祖は合気道の稽古が世界平和につながると言われていました。

 

その理念を技に表現して、より非常に丸い大きな動きになって行ったのではないかと思います。

 

くるくる回る吉祥丸先生の動きは、「和合の精神」を見事に技に表現したものと言えるかもしれません。

 

 

 

②丸い動きで中心を鍛錬するため

「一つの丸い動き、丸い動きには始めも終わりもございません。合気道の心身の鍛錬、一つになったところの鍛錬というのは、動きの上でも丸く、そして心も丸くなっていく、それが合気道の鍛錬に如実に出ているのではないかと思います。しかし、この円の丸い動きというのが、ただ単に丸く動いているのでは、どこに飛んで行ってしますのか分かりません。ですから中心がピッと大地に根ざしているという、絶対不動のものでなければならない。それでないと完全な円は描けないと、いうところに合気道の本来の良さがあります。(説明演武より)

 

 

説明演武の中で吉祥丸先生は「鍛錬」いう言葉は連呼しておられます。

 

合気道の丸い動きの稽古の中で、中心軸を体現し稽古を行う事、また、丸い動きを行う中で「中心軸」を鍛錬して行く事が大切ではないかと思います。

 

「中心軸」と言葉にするのは簡単ですが、ぶれない軸をもって技をする事は、かなりの「鍛錬」が必要ではないでしょうか?

 

私も演武の際に、どうしても中心がぶれてしまいます。

 

 

 

若かりし頃の「植芝吉祥丸先生」の演武

吉祥丸先生の実力

◉4教は痛くないのに、全く動けない。

 

私の先生(谷本館長)が段をとったばかりの頃、

 

愛媛で吉祥丸先生に来るというので、稽古会に参加したそうです。

 

 

その時の吉祥丸先生のくるくる回る技を見て、踊りみたいでショックを受けたそうです。

 

「合気道の一番、偉い先生なんだから、どんな激しい技なのか」と胸を踊らせていたので、ギャップが大きかったのだと思います。

 

 

それから数年後、また別のイベントで吉祥丸先生が愛媛に来られたそうです。

 

その時には、谷本館長も段位も上がっていたので、受身をとらせてもらう事になりました。

 

掛けられたのは4教(※)だったのですが、吉祥丸先生はポンと手を置いているだけで、全然痛くなかったそうです。

 

「あれっ、効いてない?」と思い、立ち上がろうとしたのですが、

 

全然身体が動かず、ビックリしたそうです。

 

 

その次に座っている吉祥丸先生を他の黒帯と二人で全力で押したそうです。

 

ところが、腰から下が畳に張り付いたように動かなかったそうです。 

 

※4教は手首の脈部を決める、合気道を代表する痛い技

 

 

◉全くぶつからない「手」

 

今度は吉祥丸先生は自分の片手を谷本館長と黒帯の二人で諸手で持つように言われました。

 

そこで、二人は若かった事もあり、「絶対に転ぶもんか!」と脇をしめて思い切り持ったところ、スーと全くぶつかり事なく返されてしまいました。

 

 

全くぶつるところがなく、転ばされてしまい、「これは相撲取りが持ってもあかんわ」と若い頃の館長は思ったそうです。

 

「吉祥丸先生の全くぶつかる事のない柔らかい手の感覚を今でも忘れられない。」とも言われていました。

 

 

 

私がいつも心にとめている吉祥丸先生の言葉

◉強さは徐々に内に秘めていく事が大切

 

とある古い映像で吉祥丸先生が説明演武にて、下記のような事を言われていました。

 

 

「合気道も武道ですから、当然まず強くなければなりません。しかし、合気道の場合、円熟していくにつれて、強さは表に出さず、内に秘めて行くべきだと思います。」

 

 

私も強さを内に秘める段階になって初めて合気道の妙技ができてくるのではないかと思います。

 

 

ただ、私はまだ内に秘める十分な強さがない段階だと思いますので、当面は地道に呼吸力を練って行くような稽古をしていけたらと考えています。

 

ただ、芯に強さが無く、優しいだけの合気道では意味が無いのではと思います。

 

 

まずは「強さ」があって、「優しく」の順番

 

(当然、怪我をさせるような稽古はいけませんが・・・)

 

しかし「合気道の強さ」を身につけるのも、かなりの年数と稽古が必要になるとも思います。

 

 

それを内に秘めて、優しく表現するには、何十年単位の長い地道な稽古が必要になるのではないでしょうか?

 

合気道を習得するのは時間がかかるものですから、私は腰を据えて、地道に稽古をしていきたいと思います。

 

 

 

◉しっかりとした鍛錬が下地にあるのか?

 

昔の全国演武大会の解説演武にて・・・

 

「最近、合気道でも氣の重要性を説く事も出て来ました。しかし、合気道の鍛錬が下地にあっての氣はたいへん結構なのですが、氣が一人歩きをしてしまってはいけません。」

 

 

合気道は型稽古ですので、私もよく色々な理論が選考して、身体を使っての稽古がおろそかになってしまいます。

 

私の師匠も良く言いますが、「合気道は稽古をする武道」です。

 

 

私も思うように、稽古できない時もありますが、

 

「自分はしっかり稽古をしている」と胸を張って言えるように、努力をしていきたいと思います。

 

 

稽古・・・稽古・・・

 

 

吉祥丸先生の「無理はせんといてくださいね」の一言

 

これも谷本館長から効いたお話・・・

 

合心館がJR松山駅近くに専用道場を建てる計画が決まった頃、

 

 

松山市に吉祥丸先生が来られての講習会がありました。

 

その後の懇親会で、合心館の会員さんがお酒が入っていた事もあり、吉祥丸先生に

 

「もうすぐ駅前に合心館の専用道場を建てるんです。」

 

と自慢げに言ったそうです。

 

 

その時、吉祥丸先生は

 

「谷本さん、無理はせんといてくださいね。」

 

と言われたそうです。

 

 

普通なら組織のトップなら「どんどんやって合気道を広めてくださいね。」と言いそうなものですが・・・。

 

ご自身も色々ご苦労をされた為か、思いやりを感じる一言です。

 

 

 

戦後の合気道普及発展にご苦労された吉祥丸先生

 

今、コロナで合気道家にとって、思うように稽古ができない日々が続いております。

 

こんな時だからこそ、二代目道主植芝吉祥丸先生が歩んだ道を勉強するには絶好の機会だと思います。

 

 

戦中、道場を守り(※)、

 

戦後、合気道を復興させ、日本を代表する武道として、世界中に広められたのは、吉祥丸先生の大変なご苦労が合っての事だと思います。

 

 

今、コロナで我々も道場運営が厳しい事がありますが、戦中戦後の吉祥丸先生のご苦労に比べればと思い、頑張っています。

 

私は、コロナで道場閉鎖中、上の三冊を改めて読み返してみました。

 

特に「戦後合気道群雄伝」は、当時の人間模様などが、かなり赤裸裸に書かれていて、面白さのあまり、一気読みしました。

 

おすすめですよ。 

 

ぜひ、この機会に

 

 ※戦中に東京が空襲に合い、道場の近所が大火事になった時も、命がけで道場を守られたそうです。

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    龍矢 (火曜日, 19 7月 2022 16:17)

    私は、松涛館空手を10年して、初段をもらい、そして、少林寺拳法を習い27年しました。わずかながら、北九州市で、合気道と中国武術も、習いました。中国武術は本当に、ほんのわずかですが、この記事と動画を拝見させてもらうと本当に、勉強になりました。先生が、無理をしないように。強さは、内に秘めるもの。改めて今、感動を、覚えました。確かに人間は、強くなければ、生きていけません。しかし、その強さを表にだせば、武術家として、失格です。私が、出会った、先生方は、皆、穏やかで、また、私生活の方でも大変、お世話になりました。今、それを、思いだし、涙が出そうになりました。今さらの事ですが、私は、まだまだ、だなぁと、思いました。せめて、半分は他人の幸せを、願えられる人間に、武術をとうしてなりたいものだなぁとつくづく、思いました。この記事と動画を拝見させてもらって、本当に、感謝させてもらっています。本当に、有り難うございます。長文になりましたが、お許し下さい。また、機会があれば、メールをしたいと思います。すみません、訳あって、本名はかけませんでしたが、お許し下さい。また、勉強させてください。それでは、また、よろしくお願いいたします。